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オオヤマトンボ Epophthalmia elegans

 県内各地で記録されています。非常に大きな沼や貯水池の岸辺を飛ぶ個体を見かけます。当地方では8月頃が発生のピークとなります。
 コヤマトンボによく似ていますが、コヤマトンボが流れのある場所でよく見られるのに対して、本種は止水域で見られることが多く、外観上は特に顔面の黄色の斑紋(模様)にも違いが見られます(画像を参照してください)。


オオヤマトンボ♂


オオヤマトンボ♂拡大


文章:幸田 洋平
写真:市川 裕二
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コヤマトンボ Macromia amphigena amphigena Selys

 県内各地で記録されています。盆地を流れる川幅の広い河川中流域や、日の当たる明るい放水路・用水路などで見られ、ときに大きな沼の岸辺を飛ぶ個体も見かけます。成虫は当地方では6月頃羽化し、青森県南から下北地方にかけては7月上旬頃が発生のピークとなります。
 本県が分布の北限となり、北海道には別亜種エゾコヤマトンボが分布します。本県の個体群については、腹部第3節の輪状の黄班が細くなる、もしくは途切れる個体が出現することから、その頻度や傾向等について今後調査が必要と思います。
雄は午前中や夕方に流れの岸辺に沿って高速で飛び、雌は雄の少ない時間帯に岸辺にひっそりと現れて打水産卵します。

コヤマトンボ♂


コヤマトンボ♀


コヤマトンボ♀横面


コヤマトンボ顔面


文章:幸田 洋平
写真:市川 裕二
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トラフトンボ Epiteca marginata Selys

 青森県では絶滅したとされる昆虫はいくつかありますが、このトラフトンボはそのうちのひとつです。県内では1930年代に2頭の♂の記録が残っていますが、その後現在まで発見されていません。
 隣の岩手県・秋田県南地方では現在でも生息しており、成虫は5月末頃には浮葉植物や挺水植物が豊富な平地のため池に現れる春のトンボです。
 オオトラフトンボに良く似ていますが、♂では翅の付け根に三角形の黒い模様がないこと、♀では翅の全縁に黒い帯が出る個体がある点などでも異なります(帯の出ない♀もいます)。

トラフトンボ♂(岩手県産)


トラフトンボ♀(岩手県産)


文章:幸田 洋平
写真:市川 裕二
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オオトラフトンボ Epitheca bimaculata sibirica

 本県では三八上北地方及び津軽地方で記録されており、成虫は6月中ごろに平地から山地の主に開放的で大きな池や沼を飛んでいるのが観察されますが、八甲田山系のような標高の高い場所の林道上を素早く飛翔している様子も観察されます。
 トラフトンボに良く似ていますが、♂♀ともによりがっしりした体をしており、♂では翅の付け根に三角形の黒い模様があることでも区別できます。


オオトラフトンボ♀


文章:幸田 洋平
写真:市川 裕二
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エゾトンボ Somatochlora viridiaenea

 本県では主に下北地方で多く記録されていますが、津軽地方、県南地方でも記録されています。日の当たる湿原の上やその周辺の灌木のまわり、道路上などを飛ぶ個体が観察されます。6月下旬から成虫が発生し、9月の中頃まで飛んでいる姿を見ることができます。
   交尾や産卵などの観察例が少ないため、その生態について今後の調査が待たれます。

            
エゾトンボ♂


エゾトンボ♀


文章:幸田 洋平
写真:市川 裕二
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キバネモリトンボ Somatochlora graeseri aureola

 本県では主に県南地方から下北地方にかけてでのみ記録されています。国内では北海道内では広く分布していますが、本州での確実な産地はほとんどありません。
 本県においては、低地の、付近に林のある沼の周辺で記録されていますが、多くの場合は良く晴れた日の日中に灌木のまわりや道路上などの高所を飛翔している個体が観察されています。成虫は7月から9月にかけて見られます。
 北海道においては同じような環境でタカネトンボと一緒に飛んでいるのが観察され、翅の付け根の色で区別できますが、一部では黄色い翅ではないキバネモリトンボ(モリトンボ)と同所的に生息しており、形態は非常によく似ています。
 タカネトンボとの区別点は、腹部の先の付属器の形状を見ることが妥当ですが(画像を参照してください)、実際には本県では圧倒的にタカネトンボの方が多く生息しています。  近年になって発見、採集例が増えてきましたが、本県では交尾や産卵、雄のテリトリー飛翔といった観察例が大変少なく、その生態について今後の調査が待たれます。

            
キバネモリトンボ♂


キバネモリトンボ♂尾部付属器


キバネモリトンボ♀


文章:幸田 洋平
写真:市川 裕二
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タカネトンボ Somatochlora uchidai

 本県では三八上北地方から下北地方、津軽地方とほぼ全域で見られます。成虫は7月下旬頃から発生し、秋口まで見られ、おもに平地の木陰のあるやや暗い池の岸沿いや林道上などを飛んでいるのが見られます。
 北海道においては同じような環境でキバネモリトンボと一緒に飛んでいるのが観察され、翅の付け根の色で区別できますが、一部では黄色い翅ではないキバネモリトンボ(モリトンボ)と同所的に生息しており、形態は非常によく似ています。
 キバネモリトンボとの区別点は、腹部の先の付属器の形状を見ることが妥当ですが(画像を参照してください)、実際には本県では圧倒的にタカネトンボの方が多く生息しています。

            
タカネトンボ♂


タカネトンボ♂尾部付属器


タカネトンボ♀


文章:幸田 洋平
写真:市川 裕二
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カラカネトンボ Cordulia aenea amurensis

 県内では比較的限られた地域で見られ、八甲田山系に点在する標高の高い湿原内の池で多く見られますが、海岸沿いの低地の池沼でも記録されています。5月中には羽化し、6月上旬には水域でテリトリーを張る個体が観察されます。
 分類の難しいエゾトンボ科の仲間に含まれますが、カラカネトンボ属として他のエゾトンボ類とは別の属に整理されています。外見上にも明瞭な違いがありますが、なにより春早く出現するエゾトンボ科のトンボは本種とオオトラフトンボだけであり、通常見間違えることはありません。
 良く晴れた日の午前中、池の岸に沿ってホバリングをする雄個体が見られ、雄の飛翔が途絶えたような時間帯に、雌はひっそりと水域に産卵しにやってきます。

カラカネトンボ♂


カラカネトンボ♀


文章:幸田 洋平
写真:市川 裕二
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